アイリッシュ・ウイスキーの発展を促すための税制改革の提案

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05 /16 2020

アイルランドは酒税が高いので、ウイスキーも高いです。先日、スーパーマーケットのテスコに行って調べてきたんですが、スタンダードの700ml入りだと、ジェムソンが25ユーロ、パワーが22ユーロ、ブッシュミルズ、パディー、タラモアデューが20ユーロでした。近所のお高めのスーパーだとジェムソンが30ユーロです。たぶん普通の酒屋だともちょっとします。アマゾンで調べてみると、ジェムソンは日本では2000円弱で買えますものね。


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以前も書きましたが、アイリッシュ・ウイスキーはここ10年くらいで復興の槌音も高く、稼働中、建設中、承認待ちの蒸留所を合わせると35くらいあるそうです。輸出産業の柱の1つに成長しつつあると言っても過言ではありません。また、ウイスキー・ツーリズムと言って、蒸留所の見学に訪れる観光客も多いわけです。

 

アイリッシュ・ウイスキー協会(IWA)の推定によると、2018年には約923,000人の観光客が蒸留所を訪問しています。この数は5年以内に数百万にまで上昇するのではないかと同協会は見ています。ウイスキーが目的の観光客は1人平均約60ユーロを使うので、アイリッシュ・ウイスキー業界の売り上げに約5,500万ユーロほど貢献しています。これにプラスして、宿泊費や交通費がアイルランドに落ちるわけです。

 

しかし、酒税が高いため、蒸留所を見学に来たのに、お土産にウイスキーを買う気にならないわけですよ。自分の国に帰って買った方が安いわけですから。蒸留所でしか買えないスペシャル・エディションは別として。

 

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さて、私は『アイリッシュ・ウイスキー・マガジン』という季刊誌を購読しているのですが、最新号にアイリッシュ・ウイスキーの税制に関する3つの提言という記事が載っていたのでご紹介したいと思います。筆者は、アメリカ人のジョゼフ・V・ミカレフさんというワイン/蒸留酒評論家の方です。 

 

提言その1: 最初の10万リットルまでのウイスキーにかかる酒税を50%以上低くする

 

まず、アイルランドの酒税がどれだけ高いか、他国と比較してみましょう。アイルランドの酒税は純アルコール1リットルあたり34.58ユーロ、イギリスが33.57ユーロ、アメリカが約7.4ユーロ。日本は約1000円だと思います。

 

アイルランドの場合、酒税にもVAT(消費税に似た税) 23%かかります。イギリスの場合は酒税分にはかかりません。アメリカはVATはありませんが、小売価格に州が定める売上税が加算されます。アイルランドは高いです。

 

そこで、ミカレフさんは、蒸留所が産出する最初の10万リットルにかかる税金を下げてみてはどうか、と提言します(記事にははっきり書いてないのですが、年に10万リットルということだと思います)

 

これは、大規模な蒸留所にはたいしたメリットにはならないかもしれませんが、小さな蒸留所には大きな意味があります。事業を始めたばかりの蒸留所にとって、キャッシュフローの改善や財務の安定という点で、この税金優遇措置はありがたいはずです。

 

こうした税制改革には、EUの法律の改正が必要です。しかし、これには前例があるのです。ビールの醸造については、一定限度まで税の優遇が認められており、マイクロ・ブリュワリーはその恩恵を受けています。IWAはアイルランド政府にロビー活動をして、法律の改正をEUに要求するようにプレッシャーをかけたのですが、残念ながらアイルランド政府は拒否したそうです。

 

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提言その2: 蒸留所のギフトショップに免税店と同じような税の優遇を認める

 

これは冒頭でも書きましたが、自分の国に帰って買う方が安いのであれば、わざわざギフトショップで買って、持って帰ろうとはしません。そこで、蒸留所に併設のギフトショップには免税店に匹敵する税制優遇措置を与えて、観光客の購買意欲を刺激してはどうか、という提言です。蒸留所にとっては、当然のことながら、ギフトショップで直売した方が、利益率は高くなるわけですから。

 

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提言その3:  樽で購入する消費者には、樽の購入時ではなく、熟成して瓶詰めにした時点で課税する

 

これはある程度お金を持っている方の趣味になりますが、蒸留して樽詰めした時点で樽ごとウイスキーを買う方がいるわけです。ある種の投資として購入する人もいます。新しい蒸留所にとって、これは財政的に非常に助かるわけです。3年とか熟成させなくても、すぐにお金が入ってくるわけですから。

 

酒税を樽の購入時ではなく、瓶詰めにして倉庫から出すときに支払うことにすれば、初期費用が小さくなります。したがって、より魅力的な商品になる、ということですね。

 

ミカレフさんの提言は以上です。

 


 

「アイリッシュ・ウイスキーのブームは始まったばかりだ」とミカレフさんは書いています。その成長はこれからも長く続くだろうが、アイルランド政府のサポートや税の優遇があれば、ウイスキー産業は大きなメリットを受けるだろう、とも。

 

政府の税収が大きく減らすことなく、アイルランドのウイスキー産業の振興を図ろうというこれらの提言。具体的で実行可能なものばかりではないでしょうか。19世紀後半のアイリッシュ・ウイスキーの栄華を取り戻すためにも、ぜひ真剣に検討してもらえたらいいなと思います。


 


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tarafuku10

アイルランド・ダブリン在住。男性。