ゴールデン・トライアングルと呼ばれたリバティーズ地区

歴史
04 /19 2020

リバティーズ(The Liberties)は、ダブリンの中心部から南西に徒歩で20分ほどの場所にあります。18世紀の終わりごろからウイスキーの蒸留やビールの醸造が盛んであり、1880年頃には、世界最大のビール醸造所であるギネスと世界最大のウイスキー蒸留所であるジョージ・ロウ&サンズがこの地で操業していました。

 

ほかにも、ジョン・パワーのジョンズ・レーン蒸留所、そしてジェムソンの傍流であるマロウボーン・レーン蒸留所など、一時期は半径1マイル(1.6キロ) の中に40近くの蒸留所がひしめいていており、ゴールデン・トライアングルなどと称されていました。

 

アイリッシュ・ウイスキーの衰退に伴い、ジョンズ・レーン蒸留所が1976年に閉鎖されたのを最後に、この地で稼働する蒸留所はゼロになったわけです。しかし、2015年にティーリング蒸留所がオープンしたのを皮切りに、ピアース・ライオンズ (Pearce Lyons) 蒸留所、ダブリン・リバティーズ (Dublin Liberties) 蒸留所、ロウ & (Roe & Co) 蒸留所が相次いで操業を開始。アイリッシュ・ウイスキー産業の中心地としての活気が戻りつつあります。

 

今回は、アイリッシュ・ウイスキーの豊かな伝統を引き継ぎながら、新たな息吹を育みつつあるリバティーズについてご紹介したいと思います。


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まず、リバティーズ (自由) という名前の由来です。リバティーズは今でこそダブリンの街の中心部に位置するといってもいいと思いますが、中世の時代には、ダブリン市を囲う城壁の外に位置していました。そのため、市の法律とは異なる法律に則ってこの地域は治められていました。市の法律から自由という意味でリバティーズという名前になったそうです。

 

リバティーズ地区は、古くから職人や労働者が多く暮らす地域であり、昔ながらの下町情緒の漂う街です。リバティーズの真ん中を東西に横切るトーマス・ストリート (Thomas Street) は、以前は日用品を売る露店がいくつも並んでいたのですが、最近は2軒ぐらいしか出ていないようです。


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また、ミース・ストリート (Meath Street) にあるリバティー・マーケットには、雑貨を売るお店が集まっています。ここは健在です。


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ジョンズ・レーン蒸留所の建物と敷地は、1980年以降、国立芸術デザイン大学となっています。


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キャンパスには使われなくなったポット・スチルが残されていて、蒸留所時代を忍ばせます。


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最近はIT関係の会社が集まる工業団地もでき、再開発も進んでいるようです。こちらがそのデジタル・ハブ (Digital Hub) という名の工業団地です。中央に見えている先端が緑色の塔は、セント・パトリック・タワーという名前です。これは、ジョージ・ロウ&サンズのトーマス・ストリート蒸留所に動力を提供していた風車でした (現在は羽根が取り除かれています)


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若くてお金もある人たちも集まってきたことから、そうした人たち向けのおしゃれな店もいくつかできています。これはその中の1つ。Legit という名のカフェ。ご飯も食べられます。ミース・ストリートにあります。


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それから、このあたりを散歩していると、キリスト教関係の像がいくつか目に入ります。こちらはグレイ・ストリート (Grey Street) とレジナルド・ストリート (Reginald Street) の交わるところにあるキリスト像。意匠を凝らした鉄製のキャノピーに守られたキリスト像が、交差点の真ん中に立っているのです。


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台座に刻まれたテキストによれば、この像は1929年にカトリック解放100周年を記念してセント・キャサリン教会の教区民によって建てられ、1979年の教皇ヨハネ・パウロ2世のアイルランド訪問を記念して復元されたものだとか。

 

昔はアイルランドのカトリック教徒はすごく迫害されていました。プロテスタント教徒に許されているのに、カトリック教徒には許されないことが多かったのです。それが、1829年にローマ・カトリック信徒救済法というのができて、状況が大きく改善されたわけです。その100周年を記念して建てられた像ということですね。

 

あと、由来は不明ですが、こういう像もあります。

 

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最期になりましたが、ダブリンの観光名所であるギネス博物館やクライスト・チャーチがあるのもリバティーズです。蒸留所の見学も合わせて、リバティーズを歩き回るだけで1日過ごすことができるでしょう。ヴィカー・ストリート (Vicar Street) という有名なライブ・ハウスもあります。

 

Guinness 


では次回からは、リバティーズで現在稼働する4つの蒸留所について、順番に紹介していきたいと思います。


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tarafuku10

アイルランド・ダブリン在住。男性。